機械式駐車場は大きな機械です。
便利な反面きちんと考えないと危険なものでもあります。
今回はしっかりと安全性と危険性について5章にわけてお話ししたいと思います。
1章 機械式駐車場とは?
そもそも機械式駐車場とは?
まずは機械式駐車場について簡単にお話いたします。
機械式駐車場は、限られたスペースの有効活用することができ、都市部のマンションや商業施設などに併設されていることが多いです。
その他にも、タワーパーキングという呼び名で知られている駐車場も機械式駐車場です。
機械式駐車場には様々な種類があり、以下の三種類が主な形態となっています。
①マンションなどに広く普及していて、形式は様々なものがあり、自動車を駐車させる機械を二段または三段に配置し搬送する方式の「二段・多段方式」
②多数の機械を垂直面内に円形または長円形に配置し、連続循環させる「垂直循環方式・ゴンドラ式」
③複数の駐車場を立体的に配置し、搬器を搬送装置によって駐車室へ搬送することにより、駐車を行う「エレベーター方式」
そのほかにもロボット式など、様々な仕様の駐車場装置があります。
2章 機械式駐車場における事故原因と過去事例
機械式立体駐車場では利用者が挟まれて死亡するなどの事故が多発しています。
特に多いのは装置内に人がいない事への確認不足や、子どもが予期せぬ行動をおこし、危険源に接触したために起きた事故です。
その他には室内の閉じ込め、乗降・歩行時の転倒などです。
これらは、使用マニュアル通りの操作方法、安全確認を怠った為に起きてしまった事故が大半を占めています。
下記は一部ですが、残念ながら過去に起きてしまった事例です。
利用する際の安全基準を守らず、ご利用者様の人為的なミスにより、残念ながら起きてしまった事例。
事例1:車内に残ったお子様の落下事故
・お子様が眠っていたために車内に乗せたまま、荷下ろしをし、部屋に一度帰宅。その後お子さんを迎えに行くと、車内に取り残されてしまったお子様が起きてしまい、母親を探して扉を開けてしまい、落下。幸い軽症で済みましたが、仮にてっぺんの棚に収容されており、そこから落下した場合を考えますと・・・
ご利用者様には社内に生物(ペットを含む)を残さないようにお願いしております。
事例2:落としたカギを拾おうとして起きた事故
・鍵を装置内に落としてしまい、自力で取ろうと進入禁止のメンテナンス脚立から足を踏み外して軽傷。
落下物については必ず業者に依頼するようにお願いしております。見える位置であったとしても、機械オイルで滑ってけがをする恐れがあります。
事例3:車両サイズの確認不足により起きた事故
・ドアミラーをたたまずに進入し、車が破損。
・車高、車幅などのサイズ超過のまま進入し、車が破損。
ホイルやタイヤ幅を変更したことによるサイズ変化に気づかないケースもあるため、少しでも改造、変更があった場合はご相談いただくようお願いしております。
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次に起きた事例は定期メンテナンス、経年劣化による交換時期を超過しても交換をしなかった、メンテナンス不足により起きた事例です。
事例4:メンテナンスを怠った事により起きた事故
・経年劣化による車をのせるパレットが落下
定期メンテナンスをご契約いただいていれば、メンテナンス業者より修繕計画などの提案があり、防げた事故だったと推測します。
これらを防ぐためには、ご利用者様の念入りな安全確認が必要なのと、経年劣化による故障にあたっての事故を防ぐために定期的なメンテナンスが必要です。
正直定期メンテナンスをしておらず、経過年数を超過しても動いている装置は実在します。
しかしそれはラッキーなケースであり、すべての装置に当てはまるわけではありません。
新品の家電製品も、初期不良があったり、突然故障して使えなくなることはあります。
今動いているから大丈夫。が、命に係わる大きな事故につながることもあります。
脅すわけではありませんが、事故が起きてしまってから「やっておけばよかった」と後悔しないためにも、安全性や危険性などをしっかりとご理解いただく必要があります。
そんな機械式駐車場には、法律的安全基準はあるのでしょうか?
国が定めるガイドラインについて次の章でお話いたします。
3章 「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」について
機械式駐車場は、都市施設として不可欠な施設であるものの、2章のような事故が発生すれば、最悪の場合人が亡くなってしまうなど重大な事故に至る危険性が高いです。
それゆえ、絶対安全がないと認識した上で、製造者(メーカー)・管理者(所有者、マンションの場合は管理組合が該当)・設置者(建築主、一般的にデベロッパーが該当)・利用者(マンションの住民など機械式駐車場を利用する人)の各主体がそれぞれ協力して安全確保と安全利用に取り組む事が必要です。
これを受け、国土交通省では平成26年3月に「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」を作成。
2章で紹介した機械式駐車場において発生した重大事故等の再発防止の観点から、関係主体において早期に取り組むべき安全対策を提示するものであり、各関係主体において、それぞれの段階でできる限りの安全対策を講じ、適切に利用者に情報提供や注意喚起を行うことを基本的な考えとしています。
4章 機械式駐車場の大臣認定制度
国土交通省は、「機械式駐車場安全対策に関するガイドライン」を受けて、
駐車場法を改訂し、路外駐車場に設置される機械式駐車場装置に対し、ガイドラインへの準拠を要請した。
そして、今後新たに機械式駐車場を設置する場合は、製造者があらかじめ国土交通大臣の認定をうけていなければ、設置を認めない事としました。
しかし、駐車場法は一定の規模を有し、不特定多数の者が利用する時間貸し駐車場などのみが対象になっており、マンションのような利用者が特定されている駐車場においては必ずしも規制の対象にはなりません。
ただし、近年ではマンションなどの専用駐車場でも事故が多く発生していることを受けて、路外駐車場以外でも、ガイドラインへの準拠を推奨しています。
5章 新たな安全基準に基づく駐車場装置
今までお話しした、新たな安全基準により今後新たに設置される機械式駐車場に関しては、利用者のリスクを低減するために様々な安全対策を講じることが義務づけられています。
従来は前面にチェーンは設置されているが、周囲に柵がなく、装置内への侵入が容易であったり(二段・多段方式のみ)、人を検知するセンサー・反射鏡や照明装置がなく装置内の無人確認が困難であったり、鍵があれば誰でも操作でき、前の利用者が使用している最中に使用できてしまったり、搬器の旋回部分が明示されず、万が一の巻き込みを回避できない(大型装置のみ)非常停止ボタンが設置されていなかったりする。
新たな安全基準に基づいた設計は、
①周囲に柵と全面ゲートが設置(二段・多段方式のみ)
②人が装置内に残っていることを知らせる安全センサー、反射鏡や照明の設置
→無人確認が容易になり、搬器の旋回部分が明示され(大型装置のみ)
③非常停止ボタンを設置
このように、従来の事故の原因を改善した設計になるよう工夫がされています。
しかし、従来の装置であっても、正しい利用法を遵守すれば、安全に利用することができます。
設計者がどんなに安全に考慮しても、ハイテクな技術を駆使しても、ご利用者様とオーナー様の安全への意識、人為的なものが一番大きいといえるでしょう。
機械駐車場の危険性を十分に理解したうえで適正な利用に努めることが重要です。
弊社ではリスクを最小限にする為に、負担をいかに減らし、より安全にご利用いただける方法を日々研究しております。